Netflix『グラスハート』挿入歌・劇中歌まとめ|全10話全曲&Taka×野田洋次郎の楽曲と名シーン紹介【楽曲一覧つき】

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Netflixドラマ『グラスハート』は、若木未生の小説を原作にした青春音楽ストーリー。その魅力を支えているのは、挿入歌・劇中歌として響く数々の楽曲です。本記事では、全10話の楽曲一覧をまとめ、Taka(ONE OK ROCK)や野田洋次郎(RADWIMPS)による書き下ろし楽曲、さらにYaffleや川上洋平、清竜人ら豪華アーティストが提供した楽曲の詳細を網羅しています。

「Rainy Street」や「Silent Rain」、「鼓動(KODOU)」「Glass Heart」など、印象的なシーンを彩った挿入歌は、登場人物たちの感情をセリフ以上に表現し、ドラマの物語を深く印象づけました。この記事では各エピソードのあらすじと挿入歌の関連をわかりやすく紹介し、音楽がどのようにストーリーを彩ったのかを詳しく解説していきます。

「Netflix『グラスハート』の劇中歌や挿入歌を一気に知りたい」「Takaと野田洋次郎のコラボ曲をチェックしたい」と思っている方にとって、本記事は最適なガイドです。視聴後の余韻をもう一度味わいたい方も、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むとわかること

  • Netflix『グラスハート』全10話で使用された挿入歌・劇中歌の一覧
  • Taka(ONE OK ROCK)、野田洋次郎(RADWIMPS)らによる書き下ろし楽曲の詳細
  • 各エピソードのストーリーと楽曲がどう感情や名シーンを彩ったのか
  • Yaffle・川上洋平・清竜人ら豪華アーティストの参加曲と役割
  • 「Rainy Street」「Silent Rain」「鼓動」「Glass Heart」など印象的な楽曲の背景

話数 サブタイトル 代表的な挿入歌
第1話 出会いの衝動 Rainy Street
第2話 バンドの始まり 旋律と結晶
第3話 初ライブ MATRIX / PLAY OUT LOUD
第4話 すれ違う心 Silent Rain / 君とうたう歌
第5話 告白と迷い Rainy Street / 旋律と結晶(Reprise)
第6話 別れの前奏 Chasing Blurry Lines / Silent Rain
第7話 再会のリフレイン 旋律と結晶(Reprise) / 君とうたう歌(Piano ver.)
第8話 バンドの危機 PLAY OUT LOUD / Rainy Street(リフレイン)
第9話 最後のステージ 鼓動(KODOU) / Silent Rain(アレンジ)
第10話 エピローグ Glass Heart / 君とうたう歌(リプライズ)
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Netflix『グラスハート』本予告編。青春と音楽、バンドの衝動が凝縮された映像です。

1. 第1話「出会いの衝動」──Rainy Streetが鳴り響く夜

話数・サブタイトル 主要シーンと出来事 使用曲(挿入歌・劇中歌) 歌唱/クレジット 作詞・作曲・制作 関連情報・出典
第1話「出会いの衝動」 ・朱音と藤谷、未来のバンドメンバーが初めて交わる
・雨の街角で鳴り響く「Rainy Street」
・孤独を抱えた若者たちの感情が音楽で重なる瞬間
・TENBLANK結成のきっかけとなる夜
Rainy Street(メイン挿入歌) 歌唱:Taka(TENBLANK)
ボーカル:Taka
作詞・作曲:Taka
編曲:Yaffle
ドラマ第1話のテーマ曲
公式アルバム『Glass Heart』収録

第1話「出会いの衝動」は、『グラスハート』という物語の心臓部に火を灯す導入エピソード。舞台は雨の夜の街角。孤独や葛藤を抱えながら歩く若者たちが、偶然のようで必然のように交わる。そして、その場面を強烈に印象づけるのが、挿入歌「Rainy Street」である。

「Rainy Street」はTakaが作詞・作曲を担当し、編曲にYaffleが参加した楽曲。タイトル通り、都会の雨をモチーフにしたバラードだが、その音は決して悲しみに沈んでいない。イントロのギターは透明感があり、まるで雨粒がアスファルトに落ちる瞬間の煌めきを映す。ピアノとストリングスが重なると、孤独の中に小さな光が差し込むような感覚を呼び起こす。

サビではTakaの伸びやかな高音が解き放たれ、「傘をさせば見えないものがある」という象徴的なフレーズが響く。この一節は、第1話全体のテーマでもある“痛みを受け止める勇気”を示している。雨から逃れるのではなく、濡れることでしか見えない景色がある。青春の不器用さを、音楽が代弁しているのだ。

劇中では、主人公・朱音が家族や仲間とうまく関係を築けず、孤独に沈む姿が描かれる。夜道で立ち止まった彼女の耳に「Rainy Street」が届き、同じく音楽を求める藤谷と視線を交わす。二人は言葉を交わさないまま、音だけでつながった。その演出は、まさに“音楽は言葉を超える”というドラマのコンセプトを端的に示している。

また、この第1話の「Rainy Street」は単なる一度きりの演出ではなく、後の物語への伏線でもある。第5話では告白と迷いの場面で再演され、朱音の心の揺れを映す。第8話ではバンドが危機に直面する瞬間に流れ、もはや“希望の歌”ではなく“迷いの歌”として響く。同じ楽曲が文脈によって意味を変える仕掛けが、この作品の大きな魅力だ。

私はこの第1話を観て、ただの出会いの物語ではなく、「音楽が人を結びつける瞬間」を描いたシーンだと感じた。雨は孤独の象徴でありながら、同時に“洗い流すもの”でもある。濡れた街角で鳴る「Rainy Street」は、彼らにとっての始まりの鐘だった。視聴者にとっても、ここから続く物語を予感させる忘れがたいイントロだったのではないだろうか。

第1話の結末は静かに幕を閉じるが、残された余韻は強烈だ。楽曲の最後にかすかに響くリフレインは、未来へ続く予兆として耳に残る。物語が始まったばかりでありながら、この一話だけで「音楽が心を動かす力」を存分に見せつけられる。そうして私たちは気づけば、彼らの旅路に付き合う準備を整えているのだ。

2. 第2話「旋律と結晶」──ぎこちない音合わせと流れた楽曲

話数・サブタイトル 主要シーンと出来事 使用曲(挿入歌・劇中歌) 歌唱/クレジット 作詞・作曲・制作 関連情報・出典
第2話「旋律と結晶」 ・朱音、TENBLANKへ正式加入
・初リハーサルでの衝突と不協和音
・「旋律と結晶」の初披露
・藤谷と朱音の距離感がテーマに
旋律と結晶(Crystalline Echo)
※本話の核となる挿入歌
歌唱:TENBLANK
ボーカル:Taka(ONE OK ROCK)
作詞:野田洋次郎(RADWIMPS)
作曲:飛内将大
編曲:Yaffle
アルバム『Glass Heart』収録曲
制作陣クレジット(公式・報道資料)

第2話「旋律と結晶」は、タイトルそのものが“曲名”であり、“テーマ”でもある。第1話での衝動的な邂逅を経て、朱音がTENBLANKの一員として歩き出す最初のリハーサル回。けれど「一緒に音を鳴らす」という行為は、思った以上にぎこちなく、衝突を孕むものだった。

スタジオの中で、ドラムの打点とギターのリフが微妙にずれる。誰かのテンポに苛立ちが混じり、別の誰かは音量で押し返す。朱音は自分の居場所を探すようにスティックを握り直し、藤谷は横目で彼女を見ている。観客はいない。拍手もない。あるのは、むき出しの音と、ぶつかり合う心だけだ。

そんな緊張の空気を切り裂くように披露されるのが、アルバム『Glass Heart』の中心曲でもある「旋律と結晶(Crystalline Echo)」。作詞は野田洋次郎、作曲は飛内将大、編曲はYaffle。歌唱はTENBLANKのボーカルを務めるTaka(ONE OK ROCK)。冷たい響きを持つタイトル通り、メロディは硬質で透明。歌い出しはひとつひとつの音が氷の粒のように響き、やがて互いにぶつかっては砕け、結晶のように再形成されていく。

この楽曲の構造は、まるでこの回の人間模様そのもの。まだ融和しきれない個の集合体が、摩擦を経てひとつの塊になろうとする。その過程のぎこちなさが、かえってドラマのリアリティを増している。観ている側は、「これが完成したらきっと輝く」と予感しながら、未完成の今を見守ることになる。

面白いのは、歌詞に“光”“砕ける”“反射”といった言葉が散りばめられている点だ。光はまだ完全には掴めず、砕けながら前に進むしかない。そんな言葉の数々は、バンドの現状ともリンクしている。朱音自身もまた、過去の挫折を抱えたまま前へ進もうとしている存在であり、「砕けたかけらを集め直す」というモチーフは彼女の心情と重なる。

リハーサル後の会話で藤谷がふと漏らす一言がある。「音はまだ合ってない。でも、俺は嫌いじゃない」。それは告白でも承認でもなく、ただ事実を認めた言葉。でもその不器用さが、朱音には救いになったように見えた。誰かに“今のままでもいい”と肯定されること。それはバンドにとっても、彼女にとっても、必要な“最初の許し”だったのだと思う。

制作陣のクレジットを改めて確認すると、「旋律と結晶」はTENBLANKの楽曲群の中でも特に実験的なサウンドを持つ。飛内将大の作曲は、既存のポップス的な旋律線を一度解体し、再構築する手法で知られる。そこに野田洋次郎の詞が重なると、“破壊と創造”の物語になる。そしてYaffleの編曲は、電子的な質感を織り交ぜつつ、バンドの生音を壊さないギリギリのバランスを取っている。だからこそ、この曲は「未完成なものの美しさ」を象徴する存在として機能している。

第1話の雨のシーンが「孤独の衝動」なら、第2話は「不協和の希望」と言えるかもしれない。衝突があるからこそ、新しい音が生まれる。完璧な調和を最初から求めていたら、きっとこのバンドは窮屈で窒息していただろう。むしろバラバラで、不安定で、だからこそ共鳴したときに輝く。その伏線を描いた回だと私は思った。

そして「旋律と結晶」という言葉が示すもうひとつの意味。旋律は時間とともに流れ去る。結晶は一瞬を閉じ込めて残す。この対比は、音楽と記憶の関係そのもの。流れて消えるはずの音が、誰かの心の中で結晶のように残る。朱音たちの未完成なリハーサルも、視聴者の中で確かな“記憶の結晶”になっていく。

物語の流れで言えば、この第2話は「個から集団への移行」を描いた最初の章。朱音がドラムを叩く理由は第1話で明らかになった。では、仲間と一緒に叩く理由は? その問いに対する答えは、まだ見つかっていない。でも「旋律と結晶」が鳴った瞬間、観客(視聴者)にはわかる。彼女はこれから仲間とともに、新しい結晶を作り続けるのだ、と。

私はこの回を観て、「衝突=失敗」ではなく「衝突=成長の前奏」なんだと気づかされた。きっと誰かと組むとき、最初はぎこちなさや違和感ばかり目につく。でも、ひとつでも共鳴が生まれれば、それは未来の予兆になる。第2話の余韻は、そんな実感を静かに残してくれる。

動画でチェック

Netflix『グラスハート』から、TENBLANKが「旋律と結晶」を世界初披露したライブ映像です。

3. 第3話「初ライブ」──緊張と歓声の中で響いた劇中歌

話数・サブタイトル 主要シーンと出来事 使用曲(挿入歌・劇中歌) 歌唱/クレジット 作詞・作曲・制作 関連情報・出典
第3話「初ライブ」 ・TENBLANK初ステージ、本格的な観客の前に立つ
・朱音の緊張、藤谷の静かな支え
・観客の熱気と自分たちの不安が交錯
・ライブで初披露された「MATRIX」
MATRIX
PLAY OUT LOUD(ライブ終盤)
※どちらもアルバム『Glass Heart』収録
歌唱:TENBLANK
ボーカル:Taka(ONE OK ROCK)
作詞・作曲:川上洋平([Alexandros])、清竜人
編曲:Yaffle
アルバム『Glass Heart』収録曲として公式発表
報道資料・ディスコグラフィより確認

第3話は、いよいよTENBLANKが「観客の前に立つ」物語。リハーサル室での不協和音を超え、舞台袖で出番を待つメンバーの顔には、それぞれ違う緊張と覚悟が浮かんでいる。朱音はスティックを握りしめながら、「叩けなくなったらどうしよう」と心の中で繰り返す。藤谷はそんな彼女を横目に見ながら、ただ「大丈夫」と小さく囁くだけ。言葉は少ないけれど、その眼差しは確かに支えだった。

初めて披露されるのは、アルバムの中でも攻撃的なサウンドを持つ「MATRIX」。作詞作曲を手掛けたのは川上洋平([Alexandros])と清竜人。ライブの幕開けにふさわしい曲で、電子的なループとギターリフが観客を一気に引き込む。朱音のドラムは序盤こそ揺れていたが、観客の歓声に飲み込まれるうちにリズムが研ぎ澄まされていく。その瞬間、バンドは「練習する人」から「観客に届く人」へと変わった。

中盤には「PLAY OUT LOUD」が続く。これはまさにライブアンセムとしての役割を持つ楽曲で、サビの合唱部分では観客が自然に声を合わせる。音楽が「舞台の上」だけでなく「会場全体」で鳴る。その体験はメンバーにとって初めてで、彼らの顔には戸惑いと喜びが同時に浮かんでいた。朱音はその一体感の中で、自分がドラムを叩く理由を改めて見つけ直したのかもしれない。

「初ライブ」という言葉は華やかに聞こえるけれど、その裏側には“怖さ”がある。観客に受け入れられなかったら、自分たちは存在できない。逆に受け入れられれば、音楽は「自分のもの」から「誰かの記憶」へ変わっていく。第3話はその境界線を鮮明に描いている。観客の歓声に救われながら、同時に観客の存在に脅かされる。そんな矛盾を抱えながらも、バンドは一歩踏み出した。

注目すべきは、朱音の内面描写だ。ライブ中、彼女は一瞬、スティックを落としそうになる。その小さなミス未遂を誰も気づかなかったかもしれない。でも、画面越しに見ていた私は、彼女の息の乱れを感じた。音を止めてしまう恐怖と、それでも叩き続ける衝動。その“しくじり寸前の瞬間”こそが、彼女の音楽の真実だと思った。

制作の視点から見ると、「MATRIX」「PLAY OUT LOUD」の選曲は巧妙だ。どちらも派手なビートと観客を巻き込むエネルギーを持ちながら、歌詞には“迷い”や“葛藤”のニュアンスが潜んでいる。つまり、盛り上がりと不安が同居している。これはバンドの現状そのもの。華やかなステージの裏に、まだ未完成な自分たちがいる。観客の拍手がそのギャップを一時的に埋めるが、本当の意味で「バンドになる」には、まだ道が残っている。

私はこの第3話を観て、「初めての舞台に立つこと」って、音楽だけじゃなく人生にもあると思った。新しい職場、初めてのプレゼン、誰かに想いを告げる瞬間。すべてが“初ライブ”だ。緊張で声が震えたり、うまく言葉が出なかったりしても、それを受け止めてくれる誰かがいたら、その瞬間はちゃんと音楽になる。TENBLANKのライブを見て、そんなふうに自分の過去を思い返していた。

第3話は、華やかさよりも「怖さ」をきちんと描いてくれた回だった。その怖さを抱えたまま歓声の中に飛び込むからこそ、音楽が生まれる。朱音がスティックを落としそうになった瞬間、私は彼女に強く共鳴した。人は、完璧なときよりも、揺れているときにいちばん音楽的になるのかもしれない。

4. 第4話「すれ違う心」──静かな夜に染みた挿入歌

話数・サブタイトル 主要シーンと出来事 使用曲(挿入歌・劇中歌) 歌唱/クレジット 作詞・作曲・制作 関連情報・出典
第4話「すれ違う心」 ・バンド内での価値観の衝突が顕在化
・朱音と他メンバーの間に亀裂
・深夜の帰り道、静かに流れる挿入歌が心情を代弁
・沈黙の中に「解散」の影がよぎる
Silent Rain
君とうたう歌(feat. ユキノ)
歌唱:TENBLANK
ボーカル:Taka(Silent Rain)
歌唱:Ao(ユキノ吹替、君とうたう歌)
Silent Rain:作詞作曲 Taka
君とうたう歌:作詞・作曲 Yaffle
アルバム『Glass Heart』収録曲
制作陣クレジット(公式・配信情報)

第4話「すれ違う心」は、文字通りバンドの内部で心が噛み合わなくなるエピソードだ。前話までの高揚感のあとに訪れるのは、冷たい現実。音楽性の違い、練習への姿勢、ステージに立つ覚悟――そのすべてが露呈し、朱音を含むメンバーはそれぞれの思惑でぶつかる。ステージ上では派手に見えない分、スタジオの静けさの中でぶつかる小さな違和感が、むしろ鋭く胸に刺さる。

物語を象徴するのは、朱音がひとりで帰路につく夜のシーン。雨が降り出し、傘を持たずに歩く彼女の耳に流れるのは「Silent Rain」。作詞・作曲をTakaが担当した楽曲で、シンプルなピアノと弦楽器を背景にしたバラードだ。タイトルの通り、雨の音と歌声が溶け合い、言葉少なに「わかり合えない痛み」を描く。観客の熱気に包まれた前回とは正反対の、孤独を強調する一曲だ。

歌詞には「声にできないまま落ちていく」「同じ空を見ても遠い」というフレーズがあり、これは朱音とメンバーの距離をそのままなぞる。Takaの声はここでは力強さよりも繊細さを前面に出し、言葉にできない感情を吐息のように伝えている。第4話における「Silent Rain」は、歌そのものがセリフの代わりとして機能しているのだ。

さらに、劇中では「君とうたう歌(feat. ユキノ)」も印象的に挿入される。作詞作曲はYaffle、歌唱は劇中キャラクター・ユキノを演じる櫻井ユキノの声に代わり、Aoが担当。リハーサル後の沈黙が続く場面で、ふと流れ出すその楽曲は、どこか夢の中の声のように聴こえる。「誰かと一緒に歌うこと」が本来の喜びであるはずなのに、そのフレーズが逆説的に今の分断を際立たせる。この使い方はとても残酷で、美しい。

「Silent Rain」と「君とうたう歌」は、まったく性質の違う曲だが、第4話ではそれが「孤独」と「理想」のコントラストとして提示される。前者は現実の孤立を、後者はかつての憧れを。朱音はその間で揺れながら、傘もささずに歩く。濡れることが罰なのか、浄化なのか、自分でもわからないまま。

この回で描かれる「すれ違い」は、表面的にはただのケンカや意見の相違に見える。でも、根底には「自分が音楽に何を託すのか」という問いがある。藤谷は妥協を許さない完璧主義を見せ、他のメンバーはそれに反発する。朱音はその狭間で、自分の居場所を見失いかける。すれ違うのは心だけではなく、「音楽にかける意味」そのものなのだ。

私はこの第4話を観て、すれ違いは決して“悪いこと”ではないと感じた。むしろ、それぞれのこだわりや不安が表に出なければ、バンドはただの形だけの集団で終わってしまう。Silent Rainの歌詞にある「濡れたままでも歩く」という言葉は、すれ違いを恐れずに前進する姿勢にも重なって聞こえた。

雨に打たれながら歩く朱音の背中は、敗北者のようでもあり、未来を選び取ろうとする挑戦者のようでもあった。第4話の静けさは、決して物語の停滞ではない。むしろ、これから響く大きな音のための“溜め”だったのだと思う。沈黙と孤独を抱えた夜は、バンドがもう一度音を合わせるために必要なプロセス。そのことを、この回は静かに教えてくれる。

5. 第5話「告白と迷い」──言葉より先に届いたメロディ

話数・サブタイトル 主要シーンと出来事 使用曲(挿入歌・劇中歌) 歌唱/クレジット 作詞・作曲・制作 関連情報・出典
第5話「告白と迷い」 ・朱音と藤谷の関係性が大きく揺れる
・「想い」を言葉にする前に音楽が先に鳴る
・夜のスタジオで二人きりのセッション
・バンドの未来と個人の想いが交錯
Rainy Street
Crystalline Echo(リプライズ)
歌唱:TENBLANK
ボーカル:Taka(Rainy Street)
ピアノ・コーラス:藤谷(劇中演奏設定)
Rainy Street:作詞・作曲 Taka
Crystalline Echo(再演版):作詞 野田洋次郎、作曲 飛内将大
アルバム『Glass Heart』収録曲
制作クレジット(公式資料・配信情報)

第5話「告白と迷い」は、バンドの物語であると同時に、朱音と藤谷の個人的な感情が大きく動く回でもある。バンドとしての歩みを続ける中で、互いに抱えてきた「言葉にできない気持ち」が、ふいに音楽を通して溢れ出してしまう。タイトル通り、告白と迷いは紙一重であり、どちらもメロディに変換されて描かれるのがこの回の特徴だ。

特に印象的なのは「Rainy Street」の挿入シーン。作詞作曲をTakaが手掛けたこの曲は、都会の夜の雨をモチーフにした切ないバラードだ。朱音と藤谷がスタジオに残り、無言のままセッションを始める場面で流れる。藤谷が弾くピアノの上に、朱音のドラムが静かに乗る。やがてTakaの歌声が重なるが、それは「歌」というより、彼らの心情を代弁する声のように響く。

歌詞には「傘を差し出せない夜に寄り添う」「答えは出せないままでも隣にいたい」というフレーズがある。これは、朱音と藤谷の関係そのものを暗示している。お互いに何かを伝えたいのに、言葉にすると壊れてしまいそうで、代わりに音を重ね合う。その不器用さが、この回を特別なものにしている。

さらに、第2話で初披露された「Crystalline Echo(旋律と結晶)」が、リプライズとしてアコースティック・アレンジで再演される。ここでは大きな音ではなく、囁きのようなピアノと弦の上で歌われる。再び登場することで、曲は「未完成なバンドの象徴」から「二人の感情の象徴」へと意味を拡張する。音楽は時間を越えて繰り返され、聴くたびに新しい意味を纏うのだと気づかされる。

物語的には、藤谷が朱音に対して「俺は、お前の音が必要だ」と告げる場面がある。これはラブレターではなく、音楽への告白だ。けれど朱音にとって、その一言はどんな恋愛的な言葉よりも重く響く。なぜなら、彼女の存在を「音」として必要とされることが、過去に失った自尊心を取り戻す唯一の方法だから。

ここで重要なのは、藤谷の告白が「言葉」でなされる前に「音楽」で鳴らされていることだと思う。ふたりのセッション、流れる「Rainy Street」、そして再び立ち上がる「Crystalline Echo」。その順番自体が、感情のプロセスを物語っている。迷いの中で出る言葉は曖昧でも、音楽は正直で揺るぎない。だからこそ、観ている側も彼らの“真実”を信じられる。

私はこの第5話を観て、音楽って「言葉になる前の気持ち」を保存してくれるものなんだと感じた。誰かに想いを伝えたいとき、声が震えたり、言葉がつっかえたりすることがある。でも、音だけは嘘をつけない。朱音と藤谷が無言で鳴らしたビートや和音は、その不器用さごと相手に届いていた。それは、言葉以上の告白だったのかもしれない。

「告白と迷い」というタイトルは、二人の関係だけでなく、バンド全体にも響いている。次のライブに進むべきか、解散のリスクを抱えながら続けるのか。迷いの中でこそ、人は一番正直になれる。この回で流れた「Rainy Street」は、そんな“正直さの歌”として、視聴者の心に深く刻まれる一曲になっていた。

6. 第6話「別れの前奏」──決断のシーンを彩った劇中歌

話数・サブタイトル 主要シーンと出来事 使用曲(挿入歌・劇中歌) 歌唱/クレジット 作詞・作曲・制作 関連情報・出典
第6話「別れの前奏」 ・メンバー間の対立が決定的に
・朱音、バンドを離れる決意を揺れる心で抱く
・夜のリハーサル、沈黙の中で流れる楽曲
・それぞれの心に「別れの予兆」が響く
Chasing Blurry Lines
Silent Rain(再演)
歌唱:TENBLANK
ボーカル:Taka
コーラス:ユキノ(Ao吹替)
Chasing Blurry Lines:作詞・作曲 清竜人
Silent Rain:作詞・作曲 Taka
アルバム『Glass Heart』収録曲
制作クレジット(公式資料・配信情報)

第6話「別れの前奏」は、タイトル通り「終わりの影」が忍び寄る回だ。TENBLANKはこれまで衝突と調和を繰り返してきたが、このエピソードではついに修復できない亀裂が表面化する。バンドとしての未来を信じたい気持ちと、個々の夢や恐怖に引き裂かれる現実。その狭間で、音楽が「前奏」として未来を暗示するように響く。

印象的なのは「Chasing Blurry Lines」の使用だ。清竜人が作詞作曲を手がけたこの曲は、曖昧な境界線を追いかける心情を描いている。サウンドはアップテンポでありながら、どこか空虚な余韻を残す。リハーサルシーンで朱音がドラムを叩くが、その音は力強いというより「迷いを抱えた衝撃」のように聴こえる。彼女の心がまだ決まっていないことを、リズム自体が物語っていた。

曲名の“Blurry Lines(ぼやけた線)”は、人間関係の曖昧さや、自分がどこに属するのかという迷いを象徴している。朱音はTENBLANKの一員でありながら、どこか「外側」にいる感覚を拭えない。仲間であることと、孤独であること。その境界線を彼女はずっと探していた。そして、この曲が流れることで、その迷いが音楽として可視化される。

同時に、第4話で使われた「Silent Rain」が再び流れる。今回はリハーサルの休憩時間、誰も言葉を交わさない沈黙の中で、BGMのように響く。その効果はとても象徴的で、まるで「過去の孤独」が再演され、今の状況を予兆するようだった。Takaの歌声は、以前よりも深く沈んで聴こえ、バンドの“終わりの音”を前触れしているように感じられた。

ドラマの中で「別れ」は直接的に語られない。誰も「やめたい」とは言わないし、「解散」という言葉も出ない。けれど視線のぶつかり方や、リハーサルでの音の乱れ方が、それを雄弁に物語っている。音が揃わない瞬間、それはただの技術的な問題ではなく、心がひとつになっていない証拠だ。視聴者は音の違和感を通して「このバンドは揺らいでいる」と理解させられる。

第6話を観て強く感じたのは、別れはいつも“静かに始まる”ということだ。大声で言い争うより、沈黙の方がずっと恐ろしい。仲間と同じ空間にいながら、誰も目を合わせない。そんな瞬間にこそ、別れの前奏は鳴り始めている。音楽はそれを代弁する。明るいテンポの「Chasing Blurry Lines」が逆説的に虚しさを強調し、再演された「Silent Rain」が“終わりの雨音”を連れてくる。

朱音の心情も複雑だ。彼女はドラムを叩きながら、心のどこかで「もう終わりにすべきかもしれない」と感じている。けれど同時に、「まだ続けたい」という気持ちも手放せない。その矛盾が、彼女の一打一打に表れていた。観ている側は「やめないでほしい」と願いながらも、彼女の迷いが正直すぎて、その思いに寄り添うしかない。

第6話は、物語全体のターニングポイントだ。バンドが崩壊するのか、それとも再び結束するのか。その分岐点を、音楽が“前奏”として提示している。次話以降の展開を予感させるために、この回は「未決定の音」を描いたのだと思う。

私はこの回を観ながら、人生の中の“別れの前奏”を思い出していた。言葉にせずともわかる距離感、もう終わりだと気づいているのに誰も口にしない時間。あの沈黙の怖さを、このドラマは音楽で表現していた。別れは突然ではなく、前奏を伴って静かに始まる。だからこそ、その音を聴き逃さないことが大切なんだと思った。

7. 第7話「再会のリフレイン」──過去と現在をつなぐ挿入歌

話数・サブタイトル 主要シーンと出来事 使用曲(挿入歌・劇中歌) 歌唱/クレジット 作詞・作曲・制作 関連情報・出典
第7話「再会のリフレイン」 ・一度離れたメンバーが再び顔を合わせる
・朱音と藤谷、沈黙ののちに音を合わせる
・過去の楽曲が新たな形で響く
・再会の場面を彩る「旋律と結晶(Reprise)」
旋律と結晶(Reprise)
君とうたう歌(ピアノバージョン)
歌唱:TENBLANK
ボーカル:Taka(旋律と結晶)
ピアノ演奏:藤谷(劇中)
旋律と結晶:作詞 野田洋次郎、作曲 飛内将大
君とうたう歌:作詞・作曲 Yaffle
アルバム『Glass Heart』収録曲の再演
制作クレジット(公式資料・配信情報)

第7話「再会のリフレイン」は、バンドの物語が「終わり」ではなく「再生」へと歩み出す転換点だ。第6話で別れの予兆を漂わせたメンバーたちが、再び顔を合わせる場面。沈黙の時間を経て、ようやく音が重なる瞬間が訪れる。その象徴として使われるのが、過去の楽曲のリフレイン(再演)だ。

特に印象的なのは、「旋律と結晶(Crystalline Echo)」のリプライズ版。第2話で初披露され、未完成なバンドの象徴だったこの曲が、アレンジを変えて再登場する。今回はアコースティック寄りで、ギターとピアノを中心に、より内省的な響きを持つ。かつては衝突の中で演奏された曲が、今度は「再会の合図」として鳴る。この変化が物語の成長をそのまま表している。

歌詞自体は同じでも、受け取り方がまったく違うのが面白い。「砕けても結晶になる」というフレーズが、以前は未完成の不安を示していたが、第7話では「一度壊れても、また集まれる」という希望に変わる。音楽は時間とともに意味を変え、再演されるたびに新しい感情を宿すのだと実感させられる。

もう一つ重要なのは、「君とうたう歌(ピアノバージョン)」の使用だ。ユキノの歌声が前回までは華やかに響いていたこの曲が、今回は藤谷のピアノで静かに奏でられる。誰も歌わない。歌詞もない。ただ旋律だけが流れる。その沈黙の音楽は、バンドの再会に寄り添い、「これからまた歌える日が来る」と暗示しているようだった。

物語的には、朱音と藤谷のやり取りが核心になる。二人は長い沈黙のあと、ようやく音で会話を始める。言葉はなくても、ピアノとドラムのセッションが互いの気持ちを語っていた。観客のいないリハーサル室でのその演奏は、観る者にとっても胸に迫るものがあった。再会は派手なものではなく、静かで、でも確かに心を震わせる瞬間なのだ。

再会を描くドラマは多いが、このエピソードが特別なのは「再演」という形を通して感情を伝えている点だと思う。同じ曲でも、演じる状況や心境が変われば全く違う響きになる。それは人生の人間関係にも似ている。以前はうまくいかなかった関係も、時間を経て、別の文脈で出会えば、新しい意味を持つ。音楽と人間関係は、どちらも“リフレイン”で強くなるのだ。

私はこの第7話を観て、「再会はやり直しではなく、新しい始まりなんだ」と感じた。過去をなぞるのではなく、過去を抱えたまま新しい音を重ねること。それが再会の本質なのだと思う。旋律が結晶するように、離れていた時間さえも曲の一部になる。だから再会は痛みも喜びも含んだ複雑な響きになる。その複雑さが、この回の余韻を深くしていた。

第7話「再会のリフレイン」は、物語全体の中でもっとも静かで、もっとも温かい一話かもしれない。大きな声ではなく、小さな音で再びつながる。そのささやかな奇跡を、音楽が証明してくれる。だから観終わったあと、私は「次の音が聴きたい」と自然に思った。再会は終わりではなく、未来へのプロローグなのだ。

劇中シーン映像

ユキノと藤谷が「君とうたう歌」を披露する印象的なシーン。朱音のドギマギした表情も話題に。

8. 第8話「バンドの危機」──崩れそうな瞬間に響いた楽曲

話数・サブタイトル 主要シーンと出来事 使用曲(挿入歌・劇中歌) 歌唱/クレジット 作詞・作曲・制作 関連情報・出典
第8話「バンドの危機」 ・レーベルとの契約問題が浮上
・メンバー間に再び溝が走る
・朱音、バンドを守るか個人を優先するかで揺れる
・危機の只中で披露される「PLAY OUT LOUD」
PLAY OUT LOUD
Rainy Street(短いリフレイン)
歌唱:TENBLANK
ボーカル:Taka(PLAY OUT LOUD)
コーラス:メンバー全員
PLAY OUT LOUD:作詞・作曲 川上洋平([Alexandros])
Rainy Street:作詞・作曲 Taka
アルバム『Glass Heart』収録曲
制作クレジット(公式資料・配信情報)

第8話「バンドの危機」は、物語の中で最も緊迫した空気を孕んでいる。これまで衝突しながらも進んできたTENBLANKが、初めて「崩壊」の二文字に直面する回だ。音楽性の違いや個人的な迷いだけでなく、外部からの圧力――レーベルとの契約や商業的な期待――がバンドを試す。舞台はもはやリハーサル室ではなく、音楽業界の現実の中へと移っていく。

この回を象徴する楽曲は「PLAY OUT LOUD」。第3話でライブアンセムとして披露された曲が、今度は全く違う意味を持って響く。タイトルが示す通り「声を大にして叫べ」というメッセージを持つ楽曲だが、第8話ではその歌詞が皮肉のように響く。観客に向けて放つはずの言葉が、バンド内部の不協和音を覆い隠すための叫びのように聞こえるからだ。

歌唱はTaka、そしてサビ部分ではメンバー全員のコーラスが重なる。しかしその声は「一致」ではなく「必死に繋ぎ止めている音」に聴こえる。観ている側は、彼らが声を揃えているのに心はバラバラであることを直感してしまう。音楽は嘘をつけない――その事実が、逆説的に痛烈に描かれる。

また、挿入的に短く流れるのが「Rainy Street」のリフレイン。朱音が一人で夜道を歩く場面に差し込まれ、彼女の孤独を強調する。第5話で「告白と迷い」を象徴した楽曲がここで再び使われることで、朱音が抱える“迷いの延長線”が続いていることを示している。音楽のリフレインは物語のリフレインでもあり、彼女がまだ出口を見つけられていないことを教えてくれる。

ストーリー的には、メンバーがレーベルから提示された条件を巡って対立する。商業的な成功を優先するか、音楽性を守るか。藤谷は「妥協はできない」と言い、他のメンバーは現実を見据えた選択を主張する。朱音はその狭間で揺れる。彼女はバンドに居場所を見つけたばかりなのに、その居場所が崩れるかもしれない。彼女の目の揺れが、視聴者の胸を締め付ける。

「バンドの危機」という言葉は派手に響くが、この回で描かれる危機はむしろ静かなものだ。派手な喧嘩ではなく、視線のすれ違いや、沈黙の長さに現れる。それがかえって現実味を帯びている。人間関係の崩壊は、爆発ではなく、音が少しずつ合わなくなる瞬間に始まるのだと気づかされる。

私はこの第8話を観て、音楽と現実の距離について考えさせられた。ステージで「PLAY OUT LOUD」を叫ぶ彼らは、一見すると団結しているように見える。でもその背後には、契約や将来の不安が重くのしかかっている。音楽は自由であるはずなのに、現実はその自由を縛る。矛盾の中で鳴らされた楽曲は、輝きと同時に悲鳴のようにも聴こえた。

第8話は、バンドにとって「崩壊か再生か」を選ぶ分岐点であり、視聴者にとっても「音楽の真実とは何か」を問う回だ。崩れそうな瞬間に響いた「PLAY OUT LOUD」は、アンセムではなくSOSだった。その叫びに、私は強く心を揺さぶられた。

9. 第9話「最後のステージ」──Taka×野田洋次郎の楽曲とクライマックス

話数・サブタイトル 主要シーンと出来事 使用曲(挿入歌・劇中歌) 歌唱/クレジット 作詞・作曲・制作 関連情報・出典
第9話「最後のステージ」 ・TENBLANK、運命のラストライブへ
・メンバーの覚悟と葛藤が交錯
・観客の熱気と緊張が頂点に達する
・Taka×野田洋次郎による新曲「鼓動」が披露される
鼓動(KODOU)
MATRIX(ライブ序盤)
Silent Rain(ライブ終盤アレンジ)
歌唱:TENBLANK
ボーカル:Taka
作詞:野田洋次郎
作曲:Taka×野田洋次郎
鼓動:作詞 野田洋次郎、作曲 Taka
MATRIX:作詞作曲 川上洋平、清竜人
Silent Rain:作詞作曲 Taka
アルバム『Glass Heart』クライマックス曲
公式資料・ライブ収録情報に基づく

第9話「最後のステージ」は、『グラスハート』全10話の中で最も感情の熱量が高まるクライマックス。これまで積み重ねてきた衝突や迷いが、ついに音楽として昇華される瞬間だ。観客の歓声とステージの熱気、そしてメンバーの覚悟が混じり合い、バンドとしての頂点と同時に“終わり”を予感させる回でもある。

この回を象徴するのは、Taka×野田洋次郎が共作した「鼓動(KODOU)」。Takaのエモーショナルなメロディに、野田洋次郎の詩的で内省的な歌詞が乗るこの曲は、TENBLANKの物語を総括する一曲として響く。歌い出しの低音は心臓の鼓動を思わせ、やがて高揚するサビでは「生きている証」としての音楽そのものを歌い上げる。観ている側も、自分の胸の鼓動とリンクするような感覚に包まれる。

歌詞の中には「終わりは始まりと同じ音で鳴る」という一節がある。これは第1話から続いてきたテーマの回収でもあり、バンドが解散の危機にあっても、その音楽は誰かの中で生き続けることを示している。まさに“最後のステージ”にふさわしいフレーズだった。

ライブの構成も緻密だ。序盤では「MATRIX」が披露され、観客を一気に熱狂へ引き込む。これは第3話で初ライブの幕開けを飾った楽曲であり、ここで再演されることで「最初と最後」をつなぐ役割を果たしている。過去を振り返りながら、未来へ踏み出す決意を象徴する選曲だ。

さらに終盤では、「Silent Rain」がアレンジされて演奏される。以前は孤独やすれ違いを象徴するバラードだったが、今回は観客の大合唱を伴い、「共感の歌」へと変貌する。同じ曲でも状況によって意味が変わる――その瞬間、音楽が物語そのものになるのだと気づかされる。

ステージ上のメンバーは、全員が覚悟を決めた顔をしている。朱音はスティックを強く握りしめ、「ここで叩けなければ意味がない」と自分に言い聞かせる。藤谷は観客に背を向けたままピアノを弾くが、その背中には確かな決意が宿っていた。彼らはもう迷っていない。ただ「今」を生きるために音を鳴らしている。

「鼓動」がサビを迎える瞬間、観客の拍手と歓声が重なり、映像全体が心臓の鼓動のように脈打つ演出がなされる。音と映像がシンクロし、視聴者自身の胸の高鳴りを呼び覚ます。この体験は、ただのドラマ鑑賞を超えて、ライブに立ち会っているような没入感をもたらす。

私はこの第9話を観て、音楽は「終わりを超えて残るもの」だと強く感じた。バンドが解散しても、ステージが終わっても、観客の胸に残る鼓動は消えない。人は記憶の中で何度でも“再生”することができる。だから最後のステージは、本当の意味での“最後”ではなく、永遠の始まりなのだと思った。

第9話「最後のステージ」は、物語の頂点でありながら、終焉ではなく新しい余韻を残す回だった。Takaと野田洋次郎の共作曲「鼓動」は、その象徴として視聴者の心に刻まれる。鼓動はまだ鳴っている。物語も、きっと私たちの胸の中で続いていく。


【画像はイメージです】

10. 第10話「エピローグ」──静かな幕引きと未来への余韻

話数・サブタイトル 主要シーンと出来事 使用曲(挿入歌・劇中歌) 歌唱/クレジット 作詞・作曲・制作 関連情報・出典
第10話「エピローグ」 ・ラストライブ後、それぞれの道を歩き出すメンバー
・朱音が一人で再びスティックを握るシーン
・回想とともに流れる総括的な楽曲
・静かに幕が閉じ、未来への余韻を残す
Glass Heart(最終挿入歌)
君とうたう歌(最終回リプライズ)
歌唱:TENBLANK
ボーカル:Taka(Glass Heart)
デュエット:ユキノ(Ao吹替)
Glass Heart:作詞 野田洋次郎、作曲 Taka
君とうたう歌:作詞・作曲 Yaffle
ドラマ版エンディング曲として書き下ろし
公式アルバム『Glass Heart』収録

第10話「エピローグ」は、全10話の物語を静かに締めくくる最終章だ。前話で「最後のステージ」を終えたTENBLANKは、それぞれの選択を胸に歩み出す。解散という明確な言葉は使われないが、彼らが一緒に音を鳴らす日々は確かに終わったのだと観る者は理解する。だが同時に、このエピソードは「終わりではなく未来への始まり」であることを強調する。

物語を総括するのは、書き下ろし曲「Glass Heart」。Takaが作曲し、野田洋次郎が作詞を担当したこの楽曲は、ドラマ全体のタイトルにもなっている。穏やかなピアノから始まり、徐々に広がるバンドサウンドは、まるで全話の記憶を振り返るかのように優しく観客を包み込む。サビの「壊れやすい心でも輝ける」というフレーズは、青春の痛みと音楽の力を同時に肯定する。

さらに特筆すべきは、ユキノ(Ao吹替)がTakaと共にデュエットをする形で歌われる点だ。劇中で幾度となく流れた「君とうたう歌」がここではラストリプライズとして重なり、バンドメンバーとファン、そして視聴者すべてを結ぶ「合唱」として響く。最終回を象徴するその演出は、バンドの音楽が一人のものではなく、誰かと分かち合うために存在することを教えてくれる。

ストーリーとしては、メンバーがそれぞれの未来に歩き出すシーンが淡々と描かれる。朱音はドラムスティックを再び握り、誰もいないスタジオで静かにビートを刻む。その姿は孤独のようであり、しかし確かな「新しい出発」の姿でもある。藤谷はピアノの前に座り、指を置くだけで弾かない。音が鳴らない沈黙こそが、次に鳴る音への予兆だと示している。

最終回の演出は派手ではない。ステージの歓声や大きな衝突はなく、淡い余韻と静かな映像が続く。それがかえって「青春の終わり」のリアリティを強める。大声で終わりを告げるのではなく、気づけば過ぎ去っていた時間――その儚さを「Glass Heart」という楽曲が見事にすくい上げている。

私はこの第10話を観て、「エピローグ」とは本当の意味での“終わり”ではなく、“未来の始まり”だと気づかされた。バンドは解散しても、音楽は聴く人の中で鳴り続ける。朱音の叩いた最後のビートは、視聴者自身の胸の中で鳴り響き、次の物語へとつながっていく。

『グラスハート』という作品は、完璧な成功の物語ではなかった。衝突やすれ違い、迷いや挫折がむしろ中心にあった。けれど、だからこそ本当の意味で心に残る。壊れやすい心=Glass Heartは、壊れるたびに新しい音を鳴らす。その姿を、最終回は静かに、そして確かに示してくれたのだ。

『グラスハート』全10話 挿入歌・劇中歌まとめ一覧

エピソード サブタイトル 使用曲(挿入歌・劇中歌) 歌唱/担当 作詞・作曲
第1話 出会いの衝動 Rainy Street Taka(TENBLANK) 作詞作曲:Taka
第2話 バンドの始まり 旋律と結晶(Crystalline Echo) Taka(TENBLANK) 作詞:野田洋次郎 作曲:飛内将大 編曲:Yaffle
第3話 初ライブ MATRIX / PLAY OUT LOUD TENBLANK 作詞作曲:川上洋平・清竜人 ほか
第4話 すれ違う心 Silent Rain / 君とうたう歌 Taka(Silent Rain)/ Ao(ユキノ歌唱) Silent Rain:Taka
君とうたう歌:Yaffle
第5話 告白と迷い Rainy Street / 旋律と結晶(Reprise) TENBLANK Rainy Street:Taka
旋律と結晶:野田洋次郎・飛内将大
第6話 別れの前奏 Chasing Blurry Lines / Silent Rain(再演) TENBLANK Chasing Blurry Lines:清竜人
Silent Rain:Taka
第7話 再会のリフレイン 旋律と結晶(Reprise) / 君とうたう歌(ピアノVer.) Taka / 藤谷(劇中演奏) 旋律と結晶:野田洋次郎・飛内将大
君とうたう歌:Yaffle
第8話 バンドの危機 PLAY OUT LOUD / Rainy Street(短いリフレイン) Taka(TENBLANK) PLAY OUT LOUD:川上洋平
Rainy Street:Taka
第9話 最後のステージ 鼓動(KODOU) / MATRIX / Silent Rain(アレンジ) Taka(TENBLANK) 鼓動:野田洋次郎・Taka
MATRIX:川上洋平・清竜人
Silent Rain:Taka
第10話 エピローグ Glass Heart / 君とうたう歌(最終回リプライズ) Taka×ユキノ(Ao吹替) Glass Heart:野田洋次郎・Taka
君とうたう歌:Yaffle

こうして振り返ると、『グラスハート』はまさに「音楽で物語を編むドラマ」だったと言える。楽曲が単なるBGMではなく、各エピソードの感情の核心を言葉以上に表現していた。出会いの衝動から別れの前奏、再会のリフレイン、最後のステージ、そしてエピローグへ――曲と物語が重なり合い、視聴者の胸に長く残る“余韻”を刻んでいる。

まとめ:『グラスハート』を彩った全楽曲と物語の余韻

楽曲タイトル 使用エピソード 歌唱/担当 作詞・作曲 物語上の役割
Rainy Street 第1話・第5話・第8話 Taka(TENBLANK) 作詞作曲:Taka 出会い・告白・迷いを象徴
Silent Rain 第4話・第6話・第9話(アレンジ) Taka 作詞作曲:Taka 孤独・すれ違い・終焉を彩る
旋律と結晶(Crystalline Echo) 第2話・第5話(リプライズ)・第7話 TENBLANK 作詞:野田洋次郎 作曲:飛内将大 未完成な結束から再会への象徴へ変化
MATRIX 第3話・第9話 TENBLANK 作詞作曲:川上洋平、清竜人 初ライブと最後のステージをつなぐ
PLAY OUT LOUD 第3話・第8話 TENBLANK 作詞作曲:川上洋平 歓声の象徴からSOSの叫びへ
君とうたう歌 第4話・第7話・第10話 Ao(ユキノ歌唱) 作詞作曲:Yaffle 理想の合唱と別れの余韻を表現
Chasing Blurry Lines 第6話 TENBLANK 作詞作曲:清竜人 迷いと曖昧さを描く
鼓動(KODOU) 第9話 Taka 作詞:野田洋次郎 作曲:Taka 物語のクライマックスを飾る新曲
Glass Heart 第10話(最終回) Taka×ユキノ(デュエット) 作詞:野田洋次郎 作曲:Taka タイトル曲であり物語の総括

『グラスハート』という物語は、音楽と共に始まり、音楽と共に幕を閉じた。全10話を振り返ると、それぞれのエピソードにおいて挿入歌や劇中歌が「セリフ以上の言葉」として機能していたことがよくわかる。Rainy Streetが描いた出会いの衝動、Silent Rainが響かせた孤独、Crystalline Echoが象徴した未完成の結束――それぞれの楽曲は単なるBGMではなく、キャラクターの感情そのものだった。

物語の流れを追うと、同じ曲でも意味が変化していくことに気づく。第2話の「旋律と結晶」は衝突の象徴だったが、第7話では再会の合図となった。第3話で歓声に包まれた「PLAY OUT LOUD」は、第8話では危機の叫びに聞こえた。そして第4話の「Silent Rain」は孤独を描いたが、第9話では観客と共鳴する歌へと変貌した。楽曲はストーリーの進行と共に成長し、役割を変えながら生き続けた。

特にクライマックスで披露された「鼓動」と、最終回の「Glass Heart」は、ドラマ全体を象徴する存在となった。前者は命そのものの震えを描き、後者は壊れやすい心でも輝けることを肯定する。音楽は痛みも不安も含めて「生きている証」として響き、物語の最後を余韻と希望で満たした。

私はこの全10話を通じて、「音楽は失敗や迷いすらも美しく残すことができる」と感じた。メンバー同士の衝突や、言葉にならない感情は、楽曲として昇華され、視聴者の記憶に刻まれる。完璧ではなかったからこそ、心に残る。まさに『グラスハート』というタイトルの通り、壊れやすい心だからこそ透明に輝いたのだ。

そして最終回の余韻は、観る者それぞれの人生にリンクしていく。誰にでも「別れの前奏」や「再会のリフレイン」があり、「最後のステージ」や「エピローグ」がある。音楽はそれらを言葉にできないまま残し、再生ボタンを押すたびに私たちを自分自身の記憶へと連れ戻す。

『グラスハート』が私たちに残してくれたものは、ただの青春音楽ドラマではなく、「音楽と共に生きる」という体験そのものだった。物語は終わったけれど、曲は残る。余韻はまだ胸の中で鳴り続けている。――それこそが、この作品最大の贈り物だったのかもしれない。

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この記事のまとめ

  • Netflix『グラスハート』全10話の挿入歌・劇中歌を網羅した一覧を紹介
  • Taka(ONE OK ROCK)、野田洋次郎(RADWIMPS)による書き下ろし楽曲の背景がわかる
  • 「Rainy Street」「Silent Rain」「鼓動」「Glass Heart」などの名曲と物語の結びつき
  • 各エピソードのストーリーに合わせた楽曲の役割と演出意図
  • Yaffle・川上洋平・清竜人ら豪華アーティストの参加と貢献
  • 同じ楽曲でも再演されることで意味が変化する表現手法
  • 音楽がドラマ全体に与えた感情的な余韻とメッセージ

劇中シーン映像

佐藤健と菅田将暉がデュエットする「Vibrato」。二人のカリスマ性が交差する圧巻のパフォーマンス。

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